【税理士解説】遺産分割・財産分与の進め方|対象財産・評価方法・分割の手法から協議書作成まで完全ガイド

被相続人(亡くなられた方)が残した財産を、相続人同士で正しく分け合う手続きが「遺産分割(いさんぶんかつ)」です。

「何を遺産として分けるのか」「不動産や株式はいくらと評価するのか」「揉めないように分けるにはどうすればいいのか」など、遺産分割には法律・税務の広範な知識と経験が求められます。

今回は、遺産分割の対象となる財産の範囲、6つの分割方法、財産ごとの評価ルール、特殊なケースへの対応から遺産分割協議書の作成までを分かりやすく包括的に解説します。

1. 「遺産」に含まれるもの・含まれないもの

相続が開始すると、被相続人の財産は一旦すべての相続人の「共有財産」となります。まずは、何が分割対象になるのか整理することが重要です。

① 分割の対象となるプラスの財産

現金、預貯金、有価証券(株式・国債等)、土地、家屋、借地権、家財、自動車、貴金属、骨董・美術品、ゴルフ会員権、特許権・著作権など

② 分割の対象となるマイナスの財産(負債)

借入金、買掛金(事業上の未払い)、住宅ローン、未払い金(月賦、税金、家賃、医療費など)

※葬式費用は厳密には相続開始後の費用ですが、実務上は遺産から差し引いて清算するのが一般的です。

③ 分割の対象とならない財産・非課税財産

  • 一身専属権: 被相続人本人しか行使できない権利・義務(代理権や扶養請求権など)

  • 祭祀財産: 墓地、墓石、仏壇、神棚、系譜など(慣習に従って祭祀主宰者が承継)

  • 死亡退職金・生命保険金: 受取人が指定されている場合、受取人固有の財産となり遺産分割の対象外です(ただし税務上は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります)。

  • 非課税財産: 墓所や寄付金、公益事業用財産などは相続税の課税対象から除外されます。

2. 遺産分割の「3つの決め方」と「3つの分け方」

遺産分割を進める際は、「どのように決定するか(手続き)」と「どのように分けるか(方法)」の組み合わせで検討します。

分割の決定方法(手続きの3段階)

  1. 指定分割: 遺言書がある場合、書かれた内容に従って財産を分ける(最優先)。

  2. 協議分割: 遺言書がない場合、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決める。全員の同意があれば遺言書と異なる分け方も可能。

  3. 調停・審判分割: 話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所で調停・審判を行い決定する。

財産の具体的分け方(手法の3形態)

不動産など分けるのが難しい財産がある場合、以下の3つの手法から選択します。

分割の手法

概要と特徴

現物分割(げんぶつぶんかつ)

「土地は長男、預貯金は長女」のように、財産そのものを現物のまま分ける最も一般的な方法。

換価分割(かんかぶんかつ)

不動産や有価証券を売却して現金に換え、その代金を分割する方法。評価額の不平等を防げる。

代償分割(だいしょうぶんかつ)

実家や事業用資産を特定の人が1人で引き継ぐ代わりに、他の相続人へ「自分の固有財産(現金等)」を代償金として支払って調整する方法。

3. 主な遺産の「評価方法」

遺産分割や相続税計算を行うためには、遺産の価値(評価額)を確定させる必要があります。

  • 土地: 国税庁が定める「路線価方式」、または「固定資産税評価額倍率方式」で評価します。農地等を宅地評価する場合は「宅地比準方式」を用います。

  • 家屋: 原則として「固定資産税評価額(倍率1.0)」で評価します。貸家の場合は、借家権割合(30%前後)を控除して評価額を下げることができます。

  • 預貯金: 相続開始日(死亡日)時点の残高が評価額となります。定期預金などは既経過利息分を加算します。

  • 株式:

  • 上場株式: 「死亡日の終値」「死亡月」「前月」「前々月」の各月平均終値のうち、最も低い価格を採用します。

  • 非上場株式: 会社の資産状況や業績に応じた複雑な評価(類似業種比準方式や純資産価額方式など)が必要となるため、必ず税理士へご相談ください。

4. 特殊な当事者がいる場合の対応ルール

相続人の中に手続きを行いにくい人物がいる場合、適切な法的措置をとらなければ遺産分割協議が進みません。

① 相続人の中に行方不明者がいる場合

単に連絡が取れない場合は、家庭裁判所へ「不在者財産管理人」の選任を申し立て、管理人が代わりに協議へ参加します(裁判所の許可が必要)。

なお、生死不明の状態が7年以上続いている場合は「失踪宣告」を申請し、死亡したものとみなして協議を進める選択肢もあります。

💡 【2026年最新ポイント】所有者不明土地・建物管理制度の活用

2023年4月施行の改正民法により、土地・建物に特化した「所有者不明土地・建物管理制度」が整備されました。不動産の名義変更や売却でお困りの場合は、よりスピーディな解決が可能になっています。

② 相続人に未成年者がいる場合

未成年者は原則として自ら遺産分割協議を行えません。親権者が代理人となりますが、親権者も一緒に相続人となっている場合、親と子の利益がぶつかる(利益相反)ため、家庭裁判所で「特別代理人」の選任を受けなければなりません。

⚠️ 【重要】成人年齢引き下げ(18歳成人)に注意!

2022年4月より成人年齢が18歳に引き下げられました。18歳・19歳の方は成人とみなされるため、特別代理人の選任は不要となり、本人が直接遺産分割協議に参加・押印できます。

5. 遺産分割協議書の作成と「相続登記義務化」

話し合いがまとまったら、必ず「遺産分割協議書」を書面で作成します。

  • 全員の参加と同意: 法定相続人全員で合意する必要があります(一堂に会する必要はなく、書類の郵送回送でも可)。

  • 署名・実印の押印: 書類には全員が自署し、実印を押印の上、印鑑証明書を添付します。

  • 複数枚になる場合の契印: 用紙が2枚以上になる場合は、改ざん防止のため実印で契印(割印)を行います。

🏠 【2026年最新ポイント】不動産の相続登記申請義務化への対応

2024年4月1日より、不動産の相続登記が法律で義務化されています。遺産分割協議成立から3年以内に登記申請を行わない場合、正当な理由がなければ10万円以下の過料対象となります。遺産分割協議書が完成したら、速やかに名義変更(登記)を行いましょう。

まとめ:複雑な遺産分割と財産評価は専門家への相談が解決の近道です

遺産分割は、単に「分ける」だけでなく、土地や非上場株式の複雑な評価、代償金の計算、将来の相続税の節税、不動産登記義務化への対応など、多角的な視点から慎重に進める必要があります。

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