【税理士解説】揉めない相続のために生前準備すべき3つのこと|親族トラブルを防ぐポイント

「相続で大変だったのよ」というお話を、私たちは日常的によく耳にします。

「うちは財産がないから関係ない」「兄弟仲が良いから大丈夫」と思われている方ほど、注意が必要です。誰かが亡くなれば、必ず相続は発生します。「相続なんて他人事」というのは大きな間違いです。

誰しもが円満な相続を望んでいるはずです。まずは、なぜ相続トラブルが起きるのか、そして揉めないために今からできる準備について確認していきましょう。

なぜ「財産が少なくても」相続トラブルは起きるのか?

相続に関わる諸問題は、相続税の有無とは無関係にやってきます。お金持ちだけに起きる問題ではありません。

財産をゼロにして亡くなることは不可能です。何かしらのプラスの財産、あるいは借金などのマイナスの財産が必ず残ります。相続が起きたときには、ほっておくわけにもいかず、分け合わなければなりません。

また、相続の手続きは、親の思いや子のこだわりなど、人々の人生観や人間関係を問うことになります。高齢化や核家族化が進み人間関係が希薄になる中、相続に関わる家庭裁判所への申立件数は年々増加しています。

親から子へ残した財産によって、大切な家族が不幸になることは誰も望んでいないはずです。事前に適切な対処をしておくことで、残された家族が揉めない円滑な相続を準備しましょう。

1. 相続人は誰か、その「法定相続分」を調べてみましょう

相続が開始されたとき(亡くなったとき)、財産を与える人を「被相続人」、財産を引き継ぐ人を「相続人」と言います。まずは「誰が相続人になるのか」「法定相続分はどれくらいか」を正しく知っておくことが第一歩です。

相続人の順位と範囲

配偶者は必ず相続人になります。それ以外の親族は、以下の優先順位に従って相続人となります。

  • 配偶者: 常に相続人となります。

  • 第1順位(子・孫): 子が第一順位です(養子や非嫡出子も含まれます)。子が死亡している場合は孫が相続人となります。

  • 第2順位(直系尊属): 子や孫がいない場合、父母(双方が死亡している場合は祖父母)が相続人となります。

  • 第3順位(兄弟姉妹): 第1順位も第2順位もいない場合、兄弟姉妹(死亡している場合は甥・姪)が相続人となります。

被相続人が高齢化すると、会ったこともない人物が相続人になったり、行方不明者がいたりするケースも珍しくありません。遺言書がない場合、相続人全員の協議が整わないと遺産分割ができないため、あらかじめ相続人を確定させておくことが極めて重要です。

法定相続分の目安

法律で定められた基本的な分け方(法定相続分)の目安は以下の通りです。

相続人の組み合わせ

配偶者の割合

その他の相続人の割合

配偶者 と 子

2分 の 1

子全員で 2分 の 1(均等に分配)

配偶者 と 直系尊属(親)

3分 の 2

親全員で 3分 の 1(均等に分配)

配偶者 と 兄弟姉妹

4分 の 3

兄弟姉妹全員で 4分 の 1(均等に分配)

2. 財産にはどのようなものがあるか「財産目録」を作ってみましょう

次に、ご自身の「財産目録」を作成してみましょう。相続財産には、目に見える資産だけでなく、さまざまなものが含まれます。

プラスの財産と「みなし相続財産」

  • 主な金融資産・不動産: 土地、建物、預貯金、現金、株式など

  • みなし相続財産: 生命保険金、退職手当金など(本来の相続財産ではなくても、税務上・実質的に相続で得たとみなされるもの)

マイナスの財産(借金)と3ヶ月の熟慮期間

相続は資産ばかりではありません。借金やローンなどの負債もすべて引き継ぐことになります(権利だけでなく「義務」も相続します)。

もし負債がプラスの財産より多い場合は、以下の手続きを検討する必要があります。

  1. 相続放棄: 資産も負債も一切引き継がない手続き。

  2. 限定承認: 相続したプラスの財産の範囲内でのみ負債を弁済する手続き。

⚠️ 注意点 相続放棄や限定承認の手続きは、「相続開始を知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所へ申立てを行わなければなりません。亡くなられた後、3ヶ月はあっという間です。元気なうちに財産の全体像を把握しておくことが不可欠です。

3. 自分の思いを形にする「遺言書」を書いてみましょう

遺言書が必要なのは、決して財産が多い人だけではありません。自分の思いを伝え、残された家族が無用な争いを避けるための「最高と思いやり」が遺言書です。

遺言書が特に必要なケース

  • 夫婦の間に子供がいない場合: 配偶者に全財産を残したいと思っても、義理の兄弟姉妹にも相続権が発生してしまいます。遺言書があれば配偶者にスムーズに財産を残せます。

  • 法定相続人以外に財産を残したい場合: 長年介護や面倒を見てくれた「長男の妻」など、法律上の相続権がない人に感謝の気持ちを財産として渡したい場合。

遺言書の種類と特徴

一般的な遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」があります。

  • 自筆証書遺言: 手軽に作成でき費用もかかりませんが、紛失・改ざんのリスクや、書き方の不備で法律上無効になり裁判トラブルに発展する危険があります。

  • 公正証書遺言: 公証人が関与して作成し、原簿が公証役場で安全に保管されます。不備で無効になるリスクがなく、最も確実で安心な方法として推奨いたします。

4. 日頃から「家族でコミュニケーション」をとってみましょう

相続の問題は、親も子も面と向かって話しづらいテーマです。お金の話にはどうしても遠慮が生まれます。しかし内心では、「どちらも生前にちゃんと話し合っておかなければ」と思っているのが実情です。

ざっくばらんに親子で話し合う機会をつくってみましょう。 どのような財産があるのかを親から話すことは、自身の人生の歩みを伝える素晴らしい機会になります。子供にとっても、将来の人生設計を親に話すきっかけとなります。

感謝の気持ちを共有した上で、「相続財産を何のために、どのように使うのが適当か」「どうすれば全員が気持ちよく暮らせるか」を普段からオープンに話し合える風通しの良い家族関係を作っておくことが、何よりの予防策です。

まとめ:円満な相続の第一歩は、専門家への事前相談から

もめない相続を実現するためには、「早めの実態把握」と「適切な生前準備」が欠かせません。しかし、ご家族だけで相続人や財産の調査、遺言書の作成を進めるのは、法的な落とし穴も多くハードルが高いものです。

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