【税理士解説】生前準備の進め方完全ガイド|最新の生前贈与・成年後見・自社株の事業承継まで網羅

円満な相続を迎えるためには、元気なうちからの「生前準備(生前対策)」が何よりも大切です。

相続はご家族や親族に関わるデリケートな問題であり、何の準備もないまま相続が発生してしまうと、分け方をめぐる親族トラブルや、想定外の高額な相続税に悩まされることになりかねません。

今回は、個人資産家から会社経営者まで知っておくべき「生前準備の5つの基本ステップ」、最新税制に対応した「生前贈与の活用法」、認知症に備える「成年後見制度」、そして「事業承継対策」までを分かりやすく包括的に解説します。

1. 円満相続のための「生前準備」5つの基本ステップ

生前準備は、現状を正しく把握し、将来の希望を形にしていく作業です。

  1. 法定相続人の確認: 誰が自分の財産を引き継ぐ権利を持っているのか(推定相続人)を事前に把握します。

  2. 財産リスト(財産目録)の作成: 不動産、預貯金、株式、貴金属などのプラスの財産だけでなく、住宅ローンや借入金などのマイナス財産も漏れなくリストアップします。

  3. 遺産分割方法の検討: 「誰に・どの財産を・どれだけ譲りたいか」のご自身の意思を整理します。

  4. 相続税シミュレーションと節税対策: 事前に相続税額を試算し、特例の活用や資金準備を進めます。

  5. 遺言書の作成: 自分の意思に法的効力を持たせ、家族の揉め事を防ぐために「公認の遺言書(特に公正証書遺言)」を作成します。

2. 生前贈与の賢い活用法

生前に財産を移転しておく「生前贈与」は強力な節税手段ですが、税制改正によりルールが大きく変化しています。

① 相続時精算課税制度(2,500万円特別控除 + 年110万円基礎控除)

贈与時の税負担を抑え、相続発生時にまとめて精算する制度です。

💡 【重要・最新法改正】「年110万円の基礎控除枠」が新設!

2024年(令和6年)1月以降、相続時精算課税制度に「年110万円の基礎控除枠」が導入されました。 毎年110万円までの贈与であれば贈与税は非課税・申告不要であり、将来の相続財産へ加算(持ち戻し)されることもありません。 2,500万円の特別控除枠(超えた分は一律20%)と併せて、非常に使いやすい制度へ進化しています。

相続時精算課税の「有利な財産」と「不利な財産」

区分

該当する財産

理由・特徴

適用が有利な財産

・不動産収入を生む収益物件

・自社株や将来の値上がりが確実な土地

贈与後の収益(家賃等)を受け取る人に移転でき、相続時は「贈与時点の低い評価額」で計算できるため節税効果が高い。

適用が不利な財産

・「小規模宅地等の特例」を使いたい自宅土地

・将来値下がりが見込まれる財産

精算課税を選択すると「小規模宅地等の特例(最大80%減額)」が使えなくなり、値下がりした財産も贈与時の高い価値で課税されるため。

② 夫婦間の居住用不動産贈与(おしどり贈与)

婚姻期間が20年以上の夫婦間であれば、居住用不動産(またはその購入資金)を贈与する場合、最高2,000万円まで非課税となる配偶者控除が受けられます(暦年贈与の110万円枠と併せて最大2,110万円まで非課税)。

※ただし、不動産の取得税や登録免許税がかかるため、実際の節税効果については必ず税理士へ事前シミュレーションをご依頼ください。

3. 認知症や判断能力の低下に備える「成年後見制度」

高齢になり認知症などで判断能力が低下すると、預貯金の口座凍結や不動産の売却不能、遺言書作成が不可能になるといったリスクが生じます。これらを防ぐのが「後見制度」です。

① 法定後見制度(判断能力が低下した後に申し立てる)

家庭裁判所へ申し立てを行い、本人を援助する「後見人・保佐人・補助人」を選任してもらう制度です。

  • 必要な費用目安: 申立手数料・登記用印紙代、鑑定費用(医師の診断による・数万円程度)など。

② 任意後見制度(元気なうちに契約しておく)

十分な判断能力があるうちに、将来に備えて「誰に・どのような代理権を与えるか」をあらかじめ公正証書契約で結んでおく制度です。

  • 代理できる内容: 銀行口座の入出金管理、実印・権利証の保管、株式や不動産の取引管理、生活費・医療介護費の支払いなど。

4. 会社オーナー経営者のための「事業承継対策」

経営者にとっての生前準備は、ご自身の資産だけでなく「会社の経営権と自社株(財産権)の承継」が極めて重要なテーマとなります。

経営権(代表権)と財産権(自社株)の分離防止

後継者が経営権(社長の立場)を引き継いでも、自社株(株式)が他の親族へ分散してしまうと、将来解任されるリスクが生じます。そのため、生前に自社株を後継者へ集中して移転させる計画が必要です。

「中小企業経営承継円滑化法」と「事業承継税制」の活用

後継者への自社株承継をスムーズに進めるため、国による強力な支援制度が用意されています。

  • 遺留分に関する民法特例: 後継者に贈与された自社株について、他の相続人の「遺留分侵害額請求の対象から除外(除外合意)」、または「評価額を贈与時点に固定(固定合意)」することができます。

  • 事業承継税制(納税猶予・免除): 一定の要件を満たすことで、後継者が取得した自社株に係る贈与税・相続税の全額が納税猶予(実質免除)されます。

⚠️ 事業承継は数年単位の計画的な準備が必要!

自社株の株価対策(評価減)や税制適用には経済産業局の認定や綿密な事前計画が必要です。後継者の育成と並行して、早めに専門家と事業承継プランを練り上げましょう。

まとめ:将来への不安を安心に変える生前コンサルティング

生前準備は、ご家族への「思いやり」であると同時に、節税や事業の継続性を確保するための最も効果的な戦略です。

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