自分の亡き後、残された家族が遺産分割で揉めることなく、仲良く暮らしていってほしい——。その「最後の思いやり」を法的効力のある形で残す手段が「遺言書(いごんしょ・いげんしょ)」です。
遺言書を作成しておけば、民法で定められた「法定相続分」よりも遺言書の内容が優先されるため、ご自身の意思通りの遺産分けが可能になります。
しかし、遺言書は法律で厳格な書き方やルールが定められており、要件を満たしていないと法律上無効になってしまう危険もあります。今回は、遺言書の種類や書き方、最新の保管制度、遺言で指定できること(遺言事項)、そして「遺言執行者」の役割まで詳しく解説します。
遺言書は原則として文字(書面)で残す必要があり、録音テープや動画、点字などは法律上の遺言書としては認められません。また、どれほど仲が良い夫婦であっても共同で1通の遺言書を作成することは禁止されており、必ず個人単位で作成します。
日常で使われる主な普通方式の遺言書は以下の3種類です。
遺言書の種類 | 作成方法と特徴 | メリット | デメリット・注意点 |
自筆証書遺言 | 本人が全文・日付・氏名を自筆し押印する。 | 費用がかからず、いつでも1人で作成できる。 | 不備で無効になるリスクや紛失・改ざんの恐れがある。 |
公正証書遺言 | 公証人が本人の意思を聞き取って作成する。 | 無効になるリスクがほぼなく、最も確実。 | 公証人手数料がかかり、証人2名の立会いが必要。 |
秘密証書遺言 | 文面を伏せたまま公証役場で存在のみ証明する。 | 内容を誰にも知られずに作成できる。 | 手続きが複雑で、現在ではほとんど利用されない。 |
※このほか、病気や遭難など生命の危険に迫られた際に利用できる「特別方式による遺言」もあります。
最も手軽な「自筆証書遺言」ですが、作成する際は以下の厳格なルールを守る必要があります。
確実な日付の記載: 「2026年8月2日」のように年月日を明確に自筆します(「8月吉日」などの曖昧な記載は無効になります)。
署名と押印: 遺言者の氏名を自筆し、押印します。実印でなくても有効(認印や拇印も可)ですが、偽造防止のため実印の使用を強く推奨します。
加除訂正の手順: 文字の修正や削除・追加を行う場合は、法律で定められた厳格な方式(訂正箇所への押印と欄外への訂正署名)で行わなければ無効となります。
💡 【重要・最新法改正】「財産目録」はパソコン作成が可能に!
従来は全文を自筆(手書き)する必要がありましたが、民法改正により「財産目録」の部分についてはパソコン(ワープロ)での作成や、預貯金通帳のコピー・不動産登記事項証明書の添付が認められるようになりました。(※目録のすべてのページに遺言者の署名・押印が必要です。本文・日付・氏名は従来通り自筆が必要です)。
遺言書に記載することで法的効力を発揮する項目(遺言事項)は、民法によって定められています。
認知: 婚姻関係にない相手との間の子どもを、自分の子として認めること。
未成年後見人の指定: 自分が亡くなった後、残された未成年者の子どもの後見人を指定すること。
祭祀主宰者の指定: お墓や仏壇を引き継ぐ人を指定すること。
遺産分割方法の指定: 「どの財産を・誰に・どれだけ渡すか」の指定。
遺贈(いぞう): 相続人以外の第三者(お世話になった人や福祉団体等)に財産を与えること。
遺留分侵害額請求の支払方法の指定: 相続人の最低限の取り分(遺留分)を侵害した際のお金の支払い方法の指定。
遺産分割の禁止: 相続開始から5年以内の期間、遺産分割を禁止すること。
相続人の廃除・廃除の取消: 虐待等を行った特定の相続人から相続権を剥奪すること。
遺言執行者の指定: 遺言の内容を実行する担当者を指定すること。
❌ 遺言では「できないこと」
「特定の人物を相続人に指名する」「生前に遺言書で養子縁組をする」といったことは遺言書ではできません。これらは生前に正規の戸籍手続きや養子縁組手続きを行う必要があります。
作成した遺言書は、亡くなった後に正しく発見され、かつ改ざんされない場所で保管する必要があります。
公正証書遺言の場合: 原本が公証役場に厳重に保管されます(20年以上)。紛失や改ざんの心配は一切ありません。
専門家に依頼する場合: 遺言作成を依頼した税理士や弁護士などの専門家に預けることで、守秘義務のもと安全に保管されます。
💡 自筆証書遺言は「法務局保管制度」が圧倒的におすすめ!
自筆証書遺言を全国の法務局で預かってくれる「自筆証書遺言書保管制度」が運用されています。
メリット1: 遺言書の紛失・改ざん・隠匿を100%防げる。
メリット2: 亡くなった後、通常必要な家庭裁判所の「検認」手続きが不要になり、すぐに相続手続き(預金の解約や不動産の登記)へ進める。
遺言者は、生存中であればいつでも自由な意思で遺言の全部または一部を撤回・変更できます。
前の遺言と後の遺言が矛盾する場合: 自動的に「新しい日付の遺言書」が優先され、古い遺言の内容は撤回されたものとみなされます。
自筆の遺言書を破棄した場合: 故意に破棄した部分については、遺言を取り消したものとみなされます。
遺言の内容を具体的に実現するため、遺言書の中で「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」を指定しておくことが極めて有効です。
遺言執行者は、相続開始後に以下の強力な権限を持って手続きを単独で進めます。
財産目録の作成と提示: 相続財産を調査し、目録を作成して相続人に開示する。
遺産の分配・名義変更: 遺言書に従い、不動産の相続登記や預貯金の解約・名義変更、株の移管を行う。
遺贈・認知・廃除の手続き: 受遺者への遺産引き渡しや、戸籍の届出、家庭裁判所への申立てを行う。
複雑な遺言内容や、不動産・事業資産の分配がある場合は、税理士などの専門家を「遺言執行者」に指定しておくことで、残されたご家族の手間や負担を一切かけずにスムーズな相続を完了させることができます。
自宅から亡くなった方の自筆証書遺言が見つかった場合、絶対にその場で勝手に開封してはいけません。
家庭裁判所の「検認(けんにん)」が必要: 家庭裁判所に持ち込み、相続人の立会いのもとで開封・形状の確認を受ける必要があります。
勝手に開封した場合のペナルティ: 5万円以下の過料(罰金)が科される可能性があるほか、改ざんを疑われてトラブルの原因になります(※ただし勝手に開けても遺言書自体がすぐ無効になるわけではありません)。
※繰り返しになりますが、「公正証書遺言」および「法務局で保管されていた自筆証書遺言」については、この検認手続きが一切不要となります。
遺言書は、書き方のルールや遺言事項の記載に一つでも不備があると、本人の想いが叶わないばかりか、かえって家族間の争いの原因になってしまいます。
また、相続税がかかるご家庭の場合は、「相続税の節税対策」や「二次相続(将来の相続)」まで見据えた文面づくりが不可欠です。
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東京RS税理士法人では、税務・法務の両面からご家族の状況に合わせた最適な遺言書作成(公正証書遺言の文案作成から公証役場の手配、遺言執行者の引き受けまで)をトータルでサポートいたします。
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